2026年 03月 22日
新幹線大爆破(1975、2025)

実は、草薙君が主演した「新幹線大爆破」(2025)は、Netflixで公開されてすぐ鑑賞しました。
ところが「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」の樋口監督作品にしてはまったくハマれず、世間の評価が高かったのでなおさら何も言えなくなってしまいました。
台湾映画「96分」の感想で「新幹線大爆破」を引き合いに出す方が多いので、もう一回観てみようと思い、1975年の東映版を観たら・・・、これがムチャクチャおもしろくてびっくりしました。
もう今はこの世にいらっしゃらない大スターたちが大勢出演しています。
高倉健、千葉真一、宇津井健、丹波哲郎、山本圭、小林稔侍(85)、竜雷太(86)。チョイ役で田中邦衛、北大路欣也(83)なども。
当時この映画がどのくらいヒットしたのかは分からないのですが、リメイク作品が作られるくらいだからきっと評判になったのだと思います。
何と言っても爆弾犯のリーダーが健さんですから!健さんにテロリストのイメージはまったくなかったので、こんな役もやってたんだと驚きました。映画はこの犯人グループの3人がなぜ犯行に及んだのかという事情をとても丁寧に描きます。犯行はお金目当でもあるのですが、そこに至るまでの描写からは当時の日本の社会情勢が窺えてとても興味深かったです。
犯人の要求額は500万米ドル。これって当時1ドル300円だとして15億円。今のレートだと約8億円くらい。
携帯もない時代なので、連絡はすべて公衆電話を使って行われます。
当然ながら舞台は国鉄(日本国有鉄道)です。
物語は時速80km以下になると爆発する爆弾が新幹線に仕掛けられるのですが、時速120kmをキープして東京から博多まで9時間だと言っていました。調べたら山陽新幹線が博多まで開通したのってまさにこの映画が公開された1975年の3月だったんですね。当時の最高速度は時速210kmでこの速度で行けば東京⇔博多は7時間で行けたそうです。
今は最高速度300kmで東京⇔博多間は4時間45分だそうですよ。これがそのうち時速500kmになるんでしょ?時代の進歩ってすごいですね。
当時は画期的だったんでしょうが、速度が指示された以上に上がった場合や、列車前方3km以内に障害物がある場合に自動的に停車するATC(自動列車制御装置)が搭載されていました。これは安全面の強化という点では評価されるでしょうが、この映画のような非常事態には対応できず、ATCが自動で働いてしまうと停車して爆弾が爆発すると大騒ぎになっていました。
運転士役が千葉真一で、ブレーキの解除ができず焦って力まかせに引いてましたが、私はブレーキの棒が折れちゃうんじゃないかとハラハラドキドキ。^^;
総合指令所の指令長役が宇津井健。この人が速度の調整から進路まですべて管理していて、爆弾処理に関しては国と警察にお任せし、自分はいかに安全に博多まで新幹線を走らせるかに集中します。救援車両を並走させて荷物を橋渡ししたり、どんな緊急事態にも即座に対応して危機を回避します。彼の国鉄マンとしての責任感の強さに感動しました。
国のお役人が「福岡に入って爆発するようなことがあれば民家や工場が巻き添えになる恐れがあるから、下関海峡を通過する前になるべく被害の少ない田園地帯で爆発させる」という案を出してきます。「目の前の小さな損失や犠牲を受け入れることで、より大きな利益や重要な目標を守る」と言うのですが、宇津井指令長は「そんなことは絶対にさせない!」と怒ります。
このあたりの展開は「”少数を犠牲にし、多数を救う”という考え方は正しいのか」「何を犠牲にするかは誰に決める権利があるのか」という台湾映画「96分」のテーマと被っていました。
自分の仕事に全力を尽くし、それぞれの分野が協力し合って結果を出していくという日本人の真面目さ、勤勉さ、誠実さに思わずウルウルしてしまいます。日本人としての誇りを感じられる映画だと思いました。
もちろんノンストップアクション映画として緊張感のあるよくできた映画なのですが、1975年をリアルに体感できるという意味でもとてもおもしろく鑑賞しました。
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ネタバレあります
さてさてお次は2025年のリメイク版「新幹線大爆破」です。
ネタバレしてるので未見の方は読まないでくださいね。
これは冒頭でも言ったように、最初見たときはあまり感動しなかったのです。
それはなぜかと言うと、1975年版「新幹線大爆破」を観てなかったからです!
これは1975年版を観た上で鑑賞した方が絶対おもしろい映画です。
いや、むしろそれを観ないで評価してはいけない映画だと思いました。
健さんのラストシーンが出てきたりするのですよ。回想シーンの形で1975年に起きた事件を振り返ったりします。
元ネタを知らずにそれを観てもピンとこないのは当たり前です。
こちらの主人公は、草薙くん演じる車掌さんです。
今度は東京→博多間の「ひかり」ではなく、青森発東京行きの「はやぶさ」が舞台となります。
今回仕掛けられた爆弾は時速100km以下になると爆発します。はやぶさの最高速度は260kmだそうです。新青森⇔東京の所要時間が3時間半前後でしょうか。(最新型は最高速度320kmになると劇中で言ってました。)
速度を下げられるだけ下げ東京駅までの時間を稼ぎます。それによって東京まで5時間半。その間に事件を解決しなければなりません。
1975年には存在していなかった携帯電話が、2025年には大活躍します。
情報もネットで得られるし、車内から家族に連絡することもできます。
また、たまたま乗車していた人気インフルエンサーが新幹線の中からクラウドファンディングをスタートさせます。
これが何のクラファンかと言うと、犯人が要求する爆弾解除費1000億円を国民の投げ銭によって集金するんです。これには驚いたわ。^^;
1975年版は高額な身代金にも拘わらず「乗客の命が掛かっている」と国がすぐに大蔵省に働きかけて現金を用意させていました。
2025年の日本は「テロリストとは交渉しない」という原則に則って身代金要求には屈しません。^^;
「国民から集金しろ 方法は任せる」という犯人の要求に沿って考えついたクラファンなんですが、50年という歳月が日本の社会をどのように変えてきたのか、この2本の映画を並べて鑑賞すればはっきりと見えてきます。
1975年版で問題になったATCは、非常時には作動解除できるように改善されていました。
また前回は爆弾の位置を特定するために、鉄橋に高速度撮影機を手にしたカメラマンをズラッと並べて一斉に撮影させ「うまく写りませんね」なんて言ってたのですが、今回は爆弾設置の模様を犯人がネット公開!まさかこんな時代になるなんて1975年の人は想像もつかなかったでしょうね。
新幹線を2台並走させて機材を受け取るシーンなんかは、前回でも登場しましたが、やり方は違いました。
斬新だったのは、救出号を車体の後部に連結させて、簡易通路を作り、安全な車体へほとんどの乗客を移動させたシーンです。こういう場面に、協力しあうことの尊さが滲み出ます。
あと、東北新幹線と東海道新幹線は東京駅で線路が繋がっていないのだそうです。これを短時間で一気に繋げるという試みもおもしろかったです(残念ながら実現はしないが)。結局ここでも多数が巻き添えにならないようにという国の意見が優先されていました。
宇津井健が演じた総合指令所の指令長役は斎藤工。
運転士はなんと「のん」!これも時代を表わしてますね。1975年版では国鉄職員に女性は登場しませんでした。
彼女が速度を保つためにレバーを必死に握り続けたあまり、手が固まってレバーからはずれなくなってしまうシーンがあります。車掌さんが一本一本指をはずす手伝いをしてくれます。ようやく手がはずれて自身も避難へ向かうのですが、自分の帽子をとって運転席に置くのです。あれには号泣しました。
あたり前すぎてことさら騒がれることもなくなった女性の社会進出ですが、この非常事態に運転士として一人で対応することは彼女には荷が重かっただろうと思うのです。それでも慌てることなく懸命に職務を全うしていました。手が固まってしまうくらい緊張していたと知ったときも「よくがんばったね」と泣けましたが、「後のことはお願い」と帽子に願いを託すなんて。TT 最初観た時はこの役に「のん」が合ってないと思ったのですが、見返してみると彼女のキャスティングが大成功だったことがわかりました。
後半は一気に2025年版独自の展開になります。犯人については少々設定に無理があったかもしれないけど、私はこのアイディアはおもしろいと思いました。ここで1975年と2025年が因縁で繋がるのです。
そしてやはり描いているのは、各分野で最善を尽くそうとする日本人の仕事に対する誠実さと、みんなで力を合わせて問題に立ち向かっていこうとする協調性。50年経っても変わらないもの…。TT
特に草薙くんが演じた車掌さんの精神性の高さには感服しました。
もっともっと細かく見ていくと、随所に監督のこだわりが感じられると思います。鉄道に詳しい人が見ると普通の人には気づけないような発見がたくさんありそうです。
そして伝わる、監督の「新幹線大爆破」(1975)に対するリスペクト&「夢の超特急」新幹線への愛!
多分、監督は少年時代にこの映画が大好きだったんじゃないでしょうか。
「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」と同じように、元になっている作品を知らないと、これらの作品のおもしろさを本当には理解できません。
撮ってるご本人が楽しんでらっしゃる様子が目に浮かび、観てる側もオタク心が刺激されて楽しい時間を過ごすことができました。
時代を反映させたこのオマージュ路線はぜひ続けて欲しいと思います。
次は何をリメイクするのかもう予定はあるのかな?^^
by choyon
| 2026-03-22 19:20
| ★日本映画
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