2026年 01月 12日
ひゃくえむ。

スポ根もの好きとしては気になって仕方がなかったのですが、陸上の短距離走選手の話だと知り、心のどこかでそんな地味な題材で映画になるのかな?と思っていました。
これがNetflixで配信されると知ってすぐ鑑賞したのですが・・・、よかった~、感動しました。
ここまでひとつの競技の選手を深く描くと、それはスポ根ドラマというよりは人生を描いているのと同じです。何事においても「極める」というのはとても困難な道であり、その困難を乗り越えてある程度の境地に達した人というのは尊敬に値するし、彼らの一生懸命な逃げない姿勢にすっかり影響されて、自分の生き方を反省させられました。
たった100メートル、たった10秒のことなのに、それに人生をかけている人たちにとっては、それで自分の価値が決まると思えるほど大切な瞬間です。「センチのずれで破綻し、グラムの違いで破滅する」という言葉がありましたが、そのくらい繊細で、奥深い競技なのですね。だからこそ、それで得られる高揚感にはあの距離だけに許される豊かさがあるという言葉が胸に響きました。
高校時代に陸上をやっていた友達がいて、バスケやバレーやテニスやバドミントンなどの部活がグループで楽しく練習してるそばで、いつも一人で柔軟体操などを黙々とやっているのです。自分で自分の練習計画を立て、自分のペースで自由にやっている姿がとてもうらやましかったのを覚えています。でもその地味さに私はきっと耐えられないだろうとも思っていました。才能があれば、自分自身との闘いに果敢に挑戦したかもしれませんが、すぐに挫折することもわかっていたので。。。でも、この映画で描かれる個人種目の世界にずっとあこがれていたのも事実です。
主人公のトガシ君は、小学生の頃、神童と言われるくらい足が速いことで有名でした。
全国大会でも1位になり、楽しいから走るというよりは、才能があるから走るのが当たり前のような状態だったのだと思います。周りからも一目置かれていて、大事にされていることを本人も気づいています。
「大抵のことは100メートルを誰よりも速く走れば全部解決する」そんな価値観を持つトガシ君の前に転入生の小宮君が現われます。足も遅いし、身体も弱い、なのに毎日彼はランニングを欠かしません。
「走るの好きなの?」と思わず小宮君に声をかけるトガシ君。
「現実より辛いことをすると気がまぎれるんだ。その場しのぎでも、逃げられればいいんだ」その言葉に衝撃を受けたトガシ君は小宮君に速く走る方法を教えます。メキメキと実力をあげていく小宮君。走れば走るほど脚が軽くなるような気がして夢中になります。そして新たに生まれる「勝ちたい」という欲。
そんな小宮君の情熱に恐れをなしながら、トガシ君の中では「自分は何のために走るのだろう」という疑問が生まれます。手を抜くことができないトガシ君。ずっと1位であり続けた彼をすごい形相で小宮君が追い抜いていきます。
そして「ありがとう、トガシ君」という言葉を残し、小宮君は突然転校で彼の前から消えてしまいます。
中学生になってもトガシ君は、1年なのに全国大会100メートル決勝で優勝します。
将来を有望視され、陸上界の期待を一身に背負っていたのですが、怪我をしたらしいという噂とともに名前が挙がらなくなってしまいます。
思うように記録が伸びなくなってしまったトガシ君は、走り続けることに迷いが生じ、陸上から遠ざかっていました。怪我をしたという噂を広めたのも自分自身です。
でも高校生になって純粋に走る喜びを感じ、再び走りたいという気持ちが湧いてきます。
そして全国高校総体の会場で九州No.1となった小宮君と再会します。
ここからが本当の勝負です。
トガシ君の100メートルに賭ける人生はどういうふうに展開していくのか・・・。
人生山あり谷あり。成長曲線は人それぞれ。早咲きの者もいれば遅咲きの者もいます。
無理な練習をして身体を痛める者。
勝ち続けなければならないプレッシャーに負ける者。
やり切るだけやり抜いて去っていく者。
ベテランと呼ばれてもまだ記録更新を狙う者。
現実から逃げるな立ち向かえと語る者。
負けるとわかっていても勝負に挑む者。
「人間は自分の心以外は理解できないし、誰にもどこにも居場所なんてない。
この世のあらゆることが俺たちを不安にさせる。そして最後にはみんな死ぬ。
でもそんなものには俺たちが本気でいることの幸福感を1ミリも奪えない」
自分の持てる力で精一杯闘い続けた者だけが得られる満足感。
喜びも悲しみも栄光も挫折も希望も失望も、すべてを超えてただ走り続けるだけ。
勝つか負けるかはどうでもいい。
自分自身の生き方にどれだけ納得できるか。。。
身体は限界を超えています。それでもトガシ君はスピードを緩めません。
命を賭けた たった10秒間の100メートルのゴールが目の前に迫っています。
トガシ君はいつの間にか少年の日に戻り小宮君と共に走っています。
満足げに微笑んだトガシ君の目から涙がこぼれ落ちました。
by choyon
| 2026-01-12 23:09
| ★日本映画
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