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マッド・フェイト 狂運

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喘息の発作がやっと少し治まりかけています。
「choyonさん、目が死んでますよ」と何人の方に言われたことか・・・。がんばろうという気力はあるのですが、目の色までは変えられません。無理して作る笑顔が不気味なのは自分が一番わかっています。^^;
いつどこでゲホゲホ始まるかが読めないので映画館は無理だったのですが、朝起きてみたら快晴!暖かい!気分もいい!これは行けるかもしれないと感じて、早速映画館へ!
少し早めに家を出て、咳が出始めたら電車を降りて、ホームでゲホゲホやって落ち着いたらまた電車に乗って、降りて、乗って・・・を繰り返し、ようやくたどり着いた新宿シネマカリテ!すごい人で、危うくチケットが買えないところでした。
「マッド・フェイト」の上映が今日で最終だということは頭にあったのですが、シネマカリテが今日で閉館だなんて、すっかり忘れていました。新宿駅から歩いてすぐのビルの地下にあって、マイナーな映画ばかりをここで見た覚えがあります。あの狭い階段を降りていく時の高揚感がもう味わえないのかと思うと寂しいかぎりです。

この映画をどうしても観たいと思ったのは、①ラム・カートン主演②ジョニー・トーさんプロデュース③「トワイライトウォリアーズ」のソイ・チェン監督作品④脚本がトーさん作品でお馴染みのヤウ・ナイホイ⑤香港電影金像奨の最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀編集賞を受賞した他、10部門でノミネート!
などなど、私を惹きつける要素が多数あったからです。

完全に観る人を選ぶ作品だと思います。
「パラノイア・ワールド」という言葉が宣伝文句に使われていましたが、「パラノイア」は、現実的な根拠のない強い不信感や妄想に支配される精神状態を表わしていて、まさに映画そのものが「狂気の世界」という感じです。
それを外から眺めるのではなく、狂気の世界の住人たちの目線で社会を見るなんて普通はありません。
こんなふうに見えるのか・・・と疑似体験の機会を与えられたようで画面に目が釘付けになりました。

原題の「命案」は「殺人事件」を指す言葉です。英題が「Mad Fate」で、こちらの方がタイトルとしてはピッタリだと思います。映画は「人は運命を自分の力で変えることができるのか」という重いテーマを描いています。

日本でもサイコパスと呼ばれる異常快楽殺人者が時々現れることがありますが、この映画にもサイコパスが2人登場します。
1人は生まれついての資質もあり、9歳の時に症状が進みます。血や死の臭いに異常に興奮し、猫などの小動物を襲ってしばらく収監されていました。男のせいで母は倒れ、姉は顏に大怪我を負い、家族からも恐れられています。出所してからは父親が営んでいる飲食店の配達を手伝い、なんとか症状を抑えていたのですが、配達先で殺人事件が起きたのを目撃して、血の誘惑に負けそうになります。「誰でもいいから殺したい」

もう1人のサイコパスは、医師になるための動物実験がきっかけになり、雨が降ると殺人を犯したくてたまらなくなります。トラウマが人の心に与える影響は大きく、男は自分の欲望を抑えることができません。男による娼婦連続殺人事件は香港の街を震撼とさせ、警察も必死になって犯人を追っています。

そして私が一番胸が締めつけられたのは、ラム・カートンが演じる占い師ホイさんです。
香港では占いをしてくれるところがたくさんあり、人々の生活に占いが根付いています。
私は占いにはまったく興味がないので何をやっているのかよくわからなかったのですが、四柱推命や人相、風水などホイさんはありとあらゆる占いを駆使して人の運勢を見て、よく当たる占い師として評判のようです。
「あなたは〇月〇日の〇時に運命を変えないと死ぬ」と本気で言ってるのが恐ろしいですね。
穴を掘って頭からビニールを被らせて土中に埋め、「死んだふり」をさせてお札を燃やすことで運気を変える方法を取ろうとするのですが、女性は「無理だ」と怒って帰ってしまいます。⇒そしてホイさんの占い師としての腕が確かなことが証明されます。
もうこの時点でホイさんの狂気が感じ取れるのですが、彼は「人を救いたい」という一心でやっているのだということが伝わってきます。
実はホイさんは両親とも精神に疾患があり、生まれた時から異常な世界の中で生きてきた人です。
やっと心を許せる女性と出会い愛し合うのですが、幸せを感じれば感じるほど、強烈な不安に襲われます。
自分は狂う運命にあり、彼女を幸せにすることなんかできないという想いで、気が変になっていくのを感じます。
正気を失うのが怖くて彼女から離れるのですが、それが原因で彼女は自殺。
この苦しみがあるからこそ、彼は占いとお祓いでなんとか「人の運命」を変えたいと熱望しているのです。
そして、生まれつきのサイコパスであったとしても「運命に屈するな」と励まし続けます。
ホイさんに言われた通り、人と笑顔で接する、人が喜ぶ言葉をかける、それを心がけただけで、サイコパスの青年の心に変化が生じます。
「もしかしたら別人になれるかも・・・。」
部屋中に経文を書き、平常心を保つ訓練を行うことで悪運を払えたかに見えるのですが、ホイさん自身が狂気の世界に入り込み、別のサイコパスが憑依したのかしてないのか、もう何がなんだか。。。^^;

水たまりにおぼれたアリが映ります。水たまりから出ようと必死になってもがくのですが、トタン屋根から雨粒がアリをめがけて落ちてきます。もう少しで助かるのに、天が試練を与えるのか、雨粒はアリを打ちます。なす術もなく水たまりに浮かぶアリ。

一輪の花を土に挿して育てようとするホイさん。どんなに水を与えても花は枯れてしまいます。
その絶望の中でも、花びらが落ちた後に実がなり、土中深くに根が張っていることに気がつきます。
「花は枯れて、実を成す」
僕は花だ。僕が自分で選んだ道だ。僕はまだ負けてない。運命に閉じ込められてたまるか。

狂った人たちの話ではあるのですが、これはどんな人にも当てはまる話だと思いました。
人相や生年月日や星座や姓名で、人の運命が決まっているなんてことがあるはずないです。
でも生まれつき持っている資質というのはあるような気がします。血はどこまでも人を縛って苦しめます。
それがたとえ悪しき運命だったとしても、それを克服するための手段として、占いや祈祷や宗教が存在し、人はそれに頼ろうとするのかもしれません。
私はそういうものに頼らない生き方を選んだけれど、ホイさんのような人を否定する気はありません。
上の香港版のポスターにはこう書かれてあります。
「一切皆是命 半点不由人」⇒「一切は宿命である。誰も自由には決められない」
だからこそ、「道は決まっていても、歩き方は選べるのだ」というホイさんの言葉が重く響きます。

なんとも言えない不協和音のような低く鈍い音がバックに流れ、急にそれがベートーヴェンの「運命」の旋律になったり、「戦場を架ける橋」のテーマミュージックが軽快に流れたりして音楽も映画を盛り上げます。

ラム・カートンは私のお気に入りの俳優で、運命に抗(あらが)うために天と対峙する彼の演技に痺れました。狂気と哀しさが同時に存在しているのが伝わってきます。古い映画ですが、彼が多重人格者を演じる「MAD探偵」をまた観たくなりました。
サイコパスを演じた青年の鬼気迫る演技もすごかったです。彼ってMIRRORという香港のアイドルグループのメンバーなんだそうですね。「DNA is U」というMVを見たら映画とはまるで別人で、よくこの役を引き受けたなと感心しました。

最近、香港映画だと思って観に行くと中国資本で作られていたりしますが、これは多分正真正銘の香港映画だと思われます。上映前にあの金の龍が出て来ないし。^^;
香港映画、もっとどんどん日本でも上映してほしいし、応援したいなと思っています。

不思議なことに映画を観ている時はあんなに心配していた発作は一度も起きませんでした。
夢中で見てるから、咳のことなど忘れていました。
暗く恐ろしい映画ではあるのですが、視聴後は生きる勇気をもらえた気がして、がんばって観に行って本当によかったと思いました。



by choyon | 2026-01-12 20:19 |  台湾・中国映画(鑑賞順)許光漢除く | Comments(0)

推しは周杰倫、五月天の阿信。新たな推しは許光漢!(推しはたくさんいた方がいい。^^)すべてネタバレあり。独断と偏見に満ちた自己満ブログです。


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