2025年 11月 29日
満江紅/マンジャンホン
張藝謀(チャン・イーモー)監督の「満江紅/マンジャンホン」が劇場公開されています。
この映画は2023年の東京国際映画祭で上映されましたが、その頃仕事が忙しくて見に行けませんでした。
見逃したことを残念に思っていたので、ようやく願いが叶いました。
2023年の中国での上映では900億円を超える興行収入をあげています。これは張藝謀監督作品の中でも歴代No.1の大ヒットになるそうです。
結論から先に言うと、この映画は本当にすばらしかったです!
映画としての完成度の高さに胸が震えました。大ヒットしたのも納得できます。
実は、映画で描かれている金と南宋との関係や、登場人物が実在の人物かどうかなど何もわからずに観てしまいました。
もちろん歴史を知った上で観た方がおもしろいに違いないのですが、まったく歴史がわからなくても十分に楽しめました。
ストーリーは二転三転、誰が味方で誰が敵なのか、誰と誰が繋がっているのか、まったく先の展開が読めません。
本当に脚本がよくできていると思いました。
ネタバレあり
舞台は金と南宋の国境にある古い大邸宅です。部屋と部屋は屋根なしの石回廊でつながっていて、それはまるで迷路のよう。
登場人物も限られ、そこで起きた事件を解決するために登場人物が1人で、2人で、あるいは3人で、はたまた大勢で、部屋から部屋へ移動します。その時に銅鑼(ドラ)や太鼓などの古典音楽の楽器を打ち鳴らして、女声の語り部による独創的な調べがガンガンと流れ、とても軽快なリズムを刻みます。
韓国映画の「思悼 사도(邦題 王の運命ー歴史を変えた八日間ー)」も場面転換するときに、パンソリが流れますが、それを思い出しました。
しかも!その移動を空からのカメラで写します。回廊を歩いたり走ったりする様子を観客は上からのぞいているような状態になります。そして、その歩いている人々の心情に音楽がちゃんと合ってるんです。
状態が非常に緊迫しているときにこれが流れてくるとこちらまで気持ちが高揚します。
(音量に気をつけて)
→寻找线索
これ流れてきたら何が起きるんだろうってワクワクしてきません?(笑)
→会面
これらの挿入歌を作詞作曲し歌っているのは韓紅というチベット出身の50代の女性歌手。
声量のパワフルさ、自由奔放な音作り、普段歌ってらっしゃる歌はやさしいバラードが多くて澄んだきれいな声の方です。この方の歌が映画全体をさらに魅力的にしています。
⇒これには誤りがありました。作曲は韓紅だと思うのですが、歌っているのは江南省曲劇団の張暁英という方だそうです。検索したらまさにこの方の声でした。訂正させていただきます。
この登場人物たちの「移動時間込み」で、事件を2時間(一个时辰、翻訳は「一刻」となっていたけれど中国語で一刻は15分を指すので紛らわしい)で解決しなければならないのです。
だからたびたび登場するこの歩く(小走り、走る)場面もとても重要で、毎回 曲を変えテンポよく物語が進みます。
【簡単なあらすじ】
12世紀、南宋に秦檜(しんかい)という宰相がいました。
当時、南宋の岳飛という武将が何度も金との戦いに勝利し、英雄と讃えられていました。
この岳飛が勢力を持つことを恐れた秦檜は反逆罪で岳飛を殺してしまうのです。
映画はその殺害から5年後を描きます。
金との国境での和平交渉に臨むために大軍を率いてやってきた秦檜ですが、その夜、何者かによって金の使者が殺害されてしまいます。またその使者が持っていた密書も行方不明に。
秦檜に、夜明けまでの2時間で事件を解決するように命じられた新兵営副統領の孫均と、効用兵(民間から召募された兵)の張大は、わずかな手がかりを頼りに怪しい人物の部屋を早速訪ねて回ります。
二人は限られた時間内に犯人と密書を探し出すことができるのか・・・。
個性的な役者たちの演技もこの映画の見どころです。
私は大陸の映画やドラマはほとんど見ないのですが、その私でも知っている沈騰(シェン・トン)と易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)が主役です。
沈騰は「抓娃娃(じゅあわわ)ー後継者養成計画ー」という主演映画を最近見たばかりです。
「満江紅」でもコミカルな芝居の間の取り方がほんとに上手くて、笑わせてもらいました。
変幻自在の演技には凄みもあって、出演する映画は大ヒット連続の実力者です。
彼の役を演技が固い俳優が演じると映画の雰囲気がまったく変わってしまいます。主人公二人が柔と剛だからこその対比のおもしろさがありました。
TFBOYSというアイドルグループ出身の易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)が沈騰とは違う持ち味を活かして重要な役を演じています。特にラストに近づくほどその演技力に圧倒されました。
この映画の撮影は2022年に行われているので、彼は当時まだ21歳だったんですね。「少年の君」や「長安二十四時」などに出演していて、最近Netflixで「小さな私」の配信が始まりました。とにかく芝居への取り組み方が尋常じゃないのです。身長はあまり高くないけど、これから身体つきがしっかりしてきたら、もっともっとすごい俳優になりそうです。
私はよく知らないけど、主役以外にも見せ場の多かった張譯や雷佳音も有名な俳優さんらしいですね。癖のある芝居がおもしろくて目を引きました。
私は一番上の写真の真ん中にいる岳雲鵬という俳優がすごく好み!飄々とした味があります。来年1月に日本でも公開される「唐人街探偵1900」にも出てるらしいので、また楽しみが増えました。^^
監督のお話では、この映画の舞台となった大邸宅のセットは山西省に「紅夢」の続編を作ろうと思って建てたものだそうです。
でもそちらは脚本がうまくいかず撮影をあきらめていたところ、現地の役所から「こんなの建てちゃって映画を撮らないともったいない」と言われ、この「満江紅」の脚本に取り掛かったそうです。それから脚本ができあがるまでに4年の歳月を費やしたとのこと。先に舞台セットがあり 後から物語の構想を練ったなんて巨匠らしい逸話だと思いました。
映画はこのセットから外に出ることはありません。
それなのに、その限られた空間の中で語られるストーリーは逆転に次ぐ逆転で、スリルとサスペンスあり、笑いやアクションありと内容が盛りだくさん。映画のスケールの大きさにただただ驚くばかりです。
ラストに語られる漢詩は私にはわかりません。中国人なら誰でも知っていて歌になって残っているそう。作者が誰であるかいまだに論争になるほど謎も多いらしいです。謎があるからこそ、それがどうやって民衆に広まったかに想像の余地がありフィクションを作りやすかったと監督がおっしゃっていました。
政治的なプロパガンダの匂いをまったく感じなかったと言えば嘘になるけれど、これは芸術、文化です。言葉は違っても詩に込められた想いは伝わってきました。
他国との文化的な交流を守っていくことが大切だと私は思っています。なぜなら、文化はそこに住む人を知ることができるから。
住んでいる場所は違っていても、自分と同じように生活して守りたいものがある同じ人間がそこにいることを私は知っています。その想像ができない人たちに振り回されたくないと思っています。
ということで、「満江紅」は映像芸術の最高峰のひとつじゃないかと思うくらい感動しました。
最後に予告を貼り付けておきます。
by choyon
| 2025-11-29 20:01
| 台湾・中国映画(鑑賞順)許光漢除く
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